マスクとサプライチェーン

街中にマスクが少しづつ戻ってきて価格も少しづつ下がり始めた頃、弊社にも提携企業から送られてきたマスクや防護服が届いています。親しい取引先に原価で卸したり寄付に使ったりしたいと思います。

 

 

 

これを機に中国との関係を見直そうとかサプライチェーンを見直し国内生産回帰といった記事も良くみかける様になりました。

マスク自体を生産する機械設備はある程度の投資金額があれば設置は可能と思いますし実際、弊社にも中国メーカーから自動機を日本で売れませんかという様な話も来ています。

しかし実際のところ、ものの流れというのは上流から下流迄見る必要があり、マスクの原料となる不織布にはポリプロピレンやポリエステルといった繊維原料が使われており、この生産量を見ると日本と中国では大人と子供くらいの差があります。

繊維産業とは実は非情報産業であり、情報の無い所に産業が移動していくものだと思います。つまり人件費が安い、土地が安い、何等かの優遇がある、原料自体がその国で取れるといった要因と情報自体があまり無い為に労働者の移動が起こりにくいといった要因が重なって成立するのでは、という意味です。

そういう意味で、ある時期日本はテキスタイル原料への執着を捨て炭素繊維やガラス繊維といった特殊原料の道に注力していった様に思います。

実際に経産省が出している国別生産能力シートを見てみますとその差が良く分かります。

 

 

 

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2021年予測でポリプロピレンは中国の生産能力が2,689万トンに対して日本は286万トン、ポリエステルの原料となるPTAについて見れば中国5,406万トンに対して日本65万トンと83倍の能力です。90年代半ばにテキスタイル原料の主戦場は中国やインドに移ってしまい日本は蚊帳の外になってしまった様に感じています。この原料生産プラントはマスクを作る設備に比較すれば莫大な費用とノウハウが必要となり簡単に国内に持ち込む込める様なモノではないと思います。

つまりサプライチェーンを強化するとは各原料メーカーと強く連携し欧米に横取りされない様、長期的視野を持って関係づくりを行っていくということでは無いかと思います。そういう意味でもこれを機に産業のグローバル化は加速するのでは無いかと感じている次第です。

 

 

 

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